Pipeline Flexフローダイバーターシステム(脳動脈瘤治療用機器)の研修プログラムに関するお知らせ 2015.8.20  



日本脳神経血管内治療学会会員、脳動脈瘤治療に従事する医師各位

                2015年8月20日
                特定非営利活動法人日本脳神経血管内治療学会


Pipeline Flexフローダイバーターシステム 研修プログラムについて

謹啓 諸先生にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて、脳動脈瘤治療用機器であるフローダイバーターに関しては、日本脳神経血管内治療学会(以下本学会)が日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会と共同で策定した実施基準(資料1)、適正使用指針(資料2)をすでに公表しています[註]。
本機器として2015年4月17日に承認されたPipeline Flexフローダイバーターシステムについては、実施医の研修プログラム(資料3)が製造販売事業者により提供される予定ですが、その内容については関連3学会が指名した適正使用指針策定委員(資料2)および脳血管内治療に関する専門学会である本学会の理事会でその妥当性を審議し、それぞれ2015年8月10日および同9日に承認されました。
ここに、「Pipeline Flexフローダイバーターシステム 研修プログラム」の概要を公告します。本品の使用にあたっては、本研修プログラムを受講した上で、実施基準、適正使用指針を遵守して治療を実施することを求めます。
謹白



Pipeline Flexフローダイバーターシステム 実施医研修プログラム(概要)

本品を使用するにあたっての研修プログラムは以下の5つによって構成される。
1 座学
1) 製品の詳細説明 製品の誘導について:アクセス、ガイディングシステム。サポートデバイス(いわゆるdistal access catheter)、マイクロカテーテル(Marksman)、ガイドワイヤー
製品について:構造、サイズ、製品構成など
2) 国内外臨床試験データのレビュー
   PITA, PUFSなど海外で行われたキースタディの結果
   国内臨床試験の結果と得られた知見
3) 症例レビュー
  適応
  血管径、留置部位の計測とサイズ選択
  留置手技のポイント
  抗血栓療法と経過観察
4) 添付文書等に基づく手技にかかる注意点及び発生し得る不具合・有害事象
  予想されている不具合、有害事象の種類と対応
5) 総合討論・質疑応答

2 ハンズオン
  透視下での血管モデルを用いたハンズオントレーニング
  本品の留置に必要な基本的動作の解説と実践

3 症例見学
  プロクター医師による臨床症例を最低2例見学

4 医師プロクターシップ
  症例見学2例実施後とする
  プロクター医師によるプロクター症例を最低5例実施
  実施前に症例のコンサルティングを行う

5 社内スペシャリスト立会い
  医師プロクターシップ5例実施後とする
  コヴィディエン/メドトロニック社内にて認定を受けた社員が立会いを最低5例行う

(註)研修プログラムにおける全ての症例は、適応を遵守して実施・運営を行う




資料
1 三学会承認実施基準
2 三学会承認適正使用指針
3 Pipeline Flexフローダイバーターシステム 実施医研修プログラム(概要)
  

 
関連3学会(日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本脳神経血管内治療学会)承認
頭蓋内動脈ステント(脳動脈瘤治療用Flow Diverter)実施基準(2015年4月策定)
適応 脳動脈瘤
個別の機器の適応は、個別の医療機器の薬事承認条件に基づく
実施施設基準 設備機器 手術室または血管撮影室に適切な血管撮影装置が常設されていること
治療環境 常時、脳神経外科手術に迅速に対応できる環境を有すること
症例登録 実施症例の調査に参加し、全例を登録すること
実施医基準 学会資格 脳動脈瘤に対する血管内治療の実績を十分に有する脳血管内治療専門医であること
研修義務 対象医療機器の研修プログラムを修了していること

付帯事項

調査体制 市販後調査(PMS)に参加すること
この実施基準は市販後調査の結果をもとに3年後を目処に見直す
関連3学会(日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本脳神経血管内治療学会)承認
頭蓋内動脈ステント(脳動脈瘤治療用Flow Diverter)適正使用指針(2015年4月策定、抜粋)
機器 1. 治療に際しては、薬事承認を得たFDを用いる。
現在、薬事承認されているのは、Pipeline Flex(Covidien/Medtronic社)であるが、Surpass(Stryker社)、FRED(Terumo/Microvention社)が国内で臨床試験中であり、Silk(BALT社)、Bravo(Codman/Johnson&Johnson社)、MFM(Cardiatis社)など他社にもすでに臨床使用され、本邦に導入を計画している機器がある。
適応 2. 治療適応は、個別の医療機器の薬事承認条件に基づく。
Pipelineの対象は後交通動脈分岐部より近位の内頚動脈に位置する最大径10mm以上ののワイドネック型脳動脈瘤(破裂急性期を除く)で、その他の部位への適応は承認されていない。また、これまで行われてきた外科手術や血管内治療により、安全に根治的治療が可能と考えられるものに対する適応は慎重に行うべきである。
参考までに、Surpass 臨床試験の対象は、終末部を除く内頚動脈で最大径10mm以上の未破裂脳動脈瘤、FRED臨床試験の対象は、内頚動脈・椎骨動脈・脳底動脈の10mm以上の嚢状動脈瘤、紡錘状動脈瘤、多房性動脈瘤などである。
3. 実施医療機関は、高機能血管撮影装置および常時脳神経外科手術を行える環境を有する必要がある。
脳血管内治療を行うことが出来る環境、すなわち血管造影室または手術室に血管撮影装置を備えていることが必須である。また治療中および治療後に外科治療を要することがあり得るため、脳神経外科手術が常時行える環境を有することも必要である。安全に留置するためには機器のX線透視下での視認性が重要であり、高機能血管撮影装置が設置されていることが望ましい。
4. 実施医は、脳血管内治療、特に脳動脈瘤に対する血管内治療および十分なステント支援脳動脈瘤塞栓術の実績を有する脳血管内治療専門医が行う必要がある。
脳動脈瘤に対する血管内治療、特にステント支援下の脳動脈瘤塞栓術の経験は、実際の手技および術前から術後の患者の経過観察に役立つ。
治療 5. 術前に、血管撮影を行い、正確な血管径と留置長の計測を行う。脳動脈瘤の形状や血管走行を参考に適切な機器を選択する。MRIの実施は、出血性合併症の予測に役立つ可能性がある。
6. 個々の機器の標準的取り扱いおよび留置方法を遵守し、安全かつ正確にFDを留置する。
7. 留置後のFDの母血管への密着を確認する。
抗血栓療法 8. 周術期から術後まで、抗血小板薬の併用療法が勧められる。
9. 術前に、継続的抗血栓療法の実施を妨げる要因を確認することが勧められる。
10. 術後の出血性合併症に対する適切な対応が求められる。
他の治療法 11. FDの適応と考えられる脳動脈瘤の自然歴は明らかではないが、保存的経過観察を選択する場合があることに留意すべきである。
12. 脳動脈瘤の形状、部位、側副血行の状態や頭蓋内外バイパスの実施、によって、外科手術や他の血管内治療が比較的安全および有効に可能な場合があることに留意すべきである。
策定委員

日本脳神経外科学会
 飯原 弘二;九州大学 脳神経外科
 大畑 建治;大阪市立大学 脳神経外科
 川原 信隆;横浜市立大学 脳神経外科
日本脳卒中学会
 小笠原 邦昭;岩手医科大学 脳神経外科
 峰松 一夫;国立循環器病研究センター
 矢坂 正弘;国立病院機構九州医療センター 脳血管・神経内科
日本脳神経血管内治療学会
 石井 暁;京都大学 脳神経外科
 根本 繁;東京医科歯科大学 血管内治療学
 宮地 茂;大阪医科大学 脳神経外科
 坂井 信幸;神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科(事務局担当)